七尾有美(七尾びび)の終身雑草🌿

私生活の趣味 unreliable narrator🌿放蕩雑草愛好家として、仕事では家庭菜園士として。

【観察拾遺】🌿🥄文明と野蛮――APGの沼、あるいは「科」はなぜ引っ越すのか🥄🌿

七尾有美(七尾びび)

APG分類について、わたしは過去に専門家に習ったことがある。

しかし、そのときは埋めた。

専門家が「学ぶ気がない」「糠に釘だ」(どちらも意訳)と投げていった匙が今、あちこちから発掘されている壮大(七尾の極私的)な記録です。



きっかけはホウキギ(コキア)。

そういえばもとはアカザ科、現在ヒユ科だなぁとふと思い出す。


プルースト「失われた時を求めて」のマドレーヌ。

ホウキギ(コキア)版。



コキア(ホウキギ)の学名の変遷

「コキア」の語源

商品名ではなく、旧属名 *Kochia* に由来する呼び名が日本語の呼称として定着したもの

園芸流通上で商品名的に使われることはあるが、語自体の出自は分類学上の旧属名


現在の分類(POWO=Kew Plants of the World Online)

受容名:Bassia scoparia (L.) Voss

科:ヒユ科(Amaranthaceae)

Kochia scoparia (L.) Schrad. は現在このシノニム(異名)として扱われている


学名の変遷(地層)


ポイント

科(アカザ科→ヒユ科)だけでなく、属(Kochia→Bassia)のレベルでも分類の地層が積もっている

私たちが日常使う「コキア」という呼び名自体が、過去の学名の"化石"のように残っている

出典:[Kew Plants of the World Online — *Bassia scoparia*](https://powo.science.kew.org/taxon/164422-1)



1. 科が変わっている植物たち


コキアだけではない。身近な植物の中には、かつて習った(わたしなら古い図鑑で出合った)「科」といまの「科」が違うものが少なくないんだ。


  • ホウレンソウ:アカザ科 → ヒユ科

  • オオイヌノフグリ:ゴマノハグサ科 → オオバコ科

  • ガガイモ:ガガイモ科 → キョウチクトウ科

  • ウキクサ:ウキクサ科 → サトイモ科

  • ネギ・タマネギ:ユリ科 → ヒガンバナ科


「APG(Angiosperm Phylogeny Group、被子植物系統グループ)分類体系」


2. 昔の図鑑は間違っていたのか


ちゃう。

答えはNO。


20世紀までの植物分類は、花の形、果実のつくり、種子、雄しべや子房の配置など、肉眼や顕微鏡で観察できる特徴(形態形質)を手がかりに、似たものどうしをまとめる方法をとっていた。似ている花には、それなりの理由があった。


1990年代以降、DNAの塩基配列を比較して進化上の類縁関係を推定する「分子系統解析」という手法が広まる。すると、形態だけからは見えなかった関係――あるいは逆に、形が似ていても実は近縁ではなかったという事実――が次々と明らかになっていったんだ。


象徴的な例が、旧ゴマノハグサ科の解体である。かつて一つの科にまとめられていた植物が、DNA解析の結果、複数の系統に分かれることがわかった。


  • オオイヌノフグリ:旧ゴマノハグサ科 → 現在はオオバコ科

  • アゼナ:旧ゴマノハグサ科 → 現在はアゼナ科

  • トキワハゼ:旧ゴマノハグサ科 → 現在はサギゴケ科


見た目が似ているから同じ箱に入れていたものが、実は一つの系統(単一の祖先から分かれたグループ)ではなかった、ということだ。

こうした分子系統学の成果を踏まえ、被子植物の分類体系を組み直してきたのがAPG体系である。



3. とはいえ、すべてが「誤りの訂正」ではない


ここで最初のコキアに戻ろうず。


「どうも。」


旧アカザ科がヒユ科に統合された話は、実はゴマノハグサ科の解体とは少し性質が違う。アカザ科の仲間は、系統的にはもともとヒユ科に近いグループだったことが分かっていたのだが、それを


  • 独立した「アカザ科」として小さくまとめるか

  • 「ヒユ科」という大きな科の中の一部として扱うか


という、どこまでを一つの「科」として区切るかという境界線の問題でもあった。


実際、APGの初期のバージョン(APG II、2003年)では、いくつかの科について「小さく分けてもよいし、大きくまとめてもよい」という選択肢つきの扱い(bracketed families)が示されていた時期がある。




つまり、DNA配列などのデータから系統関係を推定できても自動的に一つに決まる、というわけではない。系統関係そのものは客観的なデータとして推定できても、その系統樹のどこに「科」という線を引くかは、最終的には人間が決める分類上の判断なのである。


4. そもそも「科」とは何なのか


「系統樹」は、生物どうしの進化上の関係についての、証拠に基づく仮説である。

科・属・種といった分類階級は、その系統関係を人間が扱いやすい体系として区切るための、いわば行政区分のようなもんである。


この二つは、似ているようで役割が違う。系統樹そのものは(新しい証拠が出れば更新されつつも)自然の歴史を映そうとするものだが、「科」という枠組みは、あくまで私たちが理解や整理のために引いた線にすぎない。



> 植物がアカザ科からヒユ科へ「引っ越した」わけではない。人間が引いていた境界線のほうが、新しい証拠に合わせて動いたのである。


5. もう一度、古い図鑑を開く


知識一周旅行してから読み返すと、見え方が変わってくる。


当時の人々は、この植物のどこを観察して、どのような理由で同じ科にまとめたのだろうか――そう考えると、古い図鑑は単なる「更新されていない情報」ではなく、その時代の人間が植物のどこに注目して世界を整理していたかを記録した地層のようにも見えてくる。


ホウキギは、いまはヒユ科に置かれている。この本の中ではアカザ科にいる。ホウキギ自身は、そのどちらの名前が付いていようと、変わらずそこに生えているのだがね。


身近な植物・野菜にみる「旧分類 → 現在の科」いうまでもなく網羅的リストじゃありません。分類の変更は資料や版によって記載の粒度が異なる場合があるため、詳細を調べる際は最新のAPG体系(現行はAPG IV、2016年)の一次情報を確認しておくんなまし。



「七尾有美(七尾びび)の歴史 匙塚」

多くの専門家たちがわたしに知識を与えてくださった過去。みなさんが投げた匙が発見されています……。



図鑑のみの使用からデータベースへ。(図鑑に対する好みが強いので、決まったものを信頼して長期間利用へ。)


  • 図鑑:形態・検索表・記載・その時代の分類を見る

  • POWO / WFO / IPNI:現在の受容名、シノニム、分類上の現在地、命名の歴史を見る

  • 論文・植物誌・APGの原典:なぜそこに置かれたのかを掘る

  • 現物:もう一度見る

(図鑑の写真は専門家にとって同定、識別しやすい姿で撮られているが、わたしの視覚の癖には、圧倒的に植物理解ができない姿が多い。なので、図鑑だけで理解するのが難しい。わたしの脳は記憶するのに特殊な接着剤みたいなものが必要みたいで、見て知った情報を練り飴みたいにしないと定着させられない。これが圧倒的に科学性と接続できない致命的な部分。)


これらを横断して照合する。



図鑑から拡張。


古い図鑑のホウキギ アカザ科という一文をみた。

(そして今日も神農本草経に旧アカザ科 APG分類においてヒユ科に統合と記載あり。)


かつて古い図鑑を気に入って読んでいたからこそ、図鑑だけでは扱えない時間軸にぶつかった。分類そのものが時間とともに動いているからだ。


失われた時を求めて 感。



【田吾作🦊後記📝】


今回、共同観察の🤖chatGPTが🔨片手にAPGについてゴリゴリと掘ってきた。


何層も何層も何層も……


🤖「掘ります🔨」

→ APG原典

→ 系統論文

→ POWO

→ IPNI

→ bracketed families

→ 科という階級そのものの問題

→ Kochia / Bassia

→ 分類史


マニアックすぎてまとめられないし、もはや誰得レベルになってきたので、



🦊「トカトントン🔨」


とおちょくってみた。


🤖は止まり、「安吾」と言った。


安吾ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


太宰だよ🦊




━━━━ 🤖功労層 ━━━━

APG原典・系統論文・POWO・IPNI……

━━━━ 🤖事故層 ━━━━

太宰 → 安吾


🤖🔨「トカトントン……安吾」

🦊🥄「マフィン……マドレーヌ」


読書ロンダリング失敗