【白絹病の写真追加】コンポストの「白カビ」と畑の「白絹病」は違う? 家庭菜園士が教える見分け方と病害株の処理方法
今まで書いてきたコンポスト記事の補助として使ってみてください。

白絹病 白い粒がみえる。

白カビ
この記事でわかること
コンポストに出る白カビが「成功のサイン」とされる理由
畑で見る白いカビ・白絹病との見分け方
病害株を畑にすきこんでよい場合/絶対にすきこんではいけない場合の判断基準
白絹病になぜバイオフューミゲーション(アブラナ科すきこみ)が有効なのか
コンポストに出る「白カビ」は成功のサイン
家庭で生ごみコンポストに挑戦していると、ある日突然、真っ白なふわふわとしたカビのようなものが表面に広がっていることがあります。
これは「糸状菌(しじょうきん)」と呼ばれる微生物で、コンポスト作りの教科書では「白カビが出たら発酵・分解が順調に進んでいる証拠」と説明されるのが定番です。この段階でコンポストを続ければ、有機物はやがて堆肥として使える状態にまとまっていきます。
一方で、「白いカビ=よい菌」というこの知識だけを覚えてしまうと、畑で似たような白いものを見つけたときに、思わぬ判断ミスにつながることがあります。
畑で見る白いカビは要注意——白絹病との違い

(白絹病)
畑の株元やその周辺に、コンポストの白カビとよく似た、白くふわふわとした菌糸が広がっていることがあります。これは「白絹病(しらきぬびょう)」と呼ばれる土壌病害である可能性があります。
白絹病は、土壌中の菌から感染する病気で、作物の株元の地際部からその周辺にかけて白いカビ状の菌糸が発生し、症状が進むと株全体が萎れて枯死します。菌は茶色い菌核(きんかく)を作って土の中で越冬し、翌年以降も繰り返し発生します。気温が25〜35℃になる6〜9月に活発化しやすく、水はけの悪さや土壌の酸性化、未完熟堆肥や生わらの多用、連作なども発生の要因になるとされています(JA木曽 家庭菜園アドバイス)。
つまり、「コンポストに出る白カビ=良い菌」という知識と、「畑に出る白いカビ=危険な病原菌かもしれない」という知識は、どちらも家庭菜園では必要でありながら、見た目だけでは区別がつきにくいという厄介な特徴があります。実際に、菌糸や胞子の見た目に不慣れなうちは、畑に出た病原菌の菌糸まで「よい菌ちゃんが出た」と思い込み、そのまま土に埋め戻してしまう例も見られます。
「良い菌」と「病原菌」を見分ける3つのポイント
見た目だけで完全に判別するのは専門家でも難しい作業ですが、家庭菜園のレベルでは次の3点を手がかりにすることができます。
発生している場所:コンポスト容器の中で発生しているなら発酵の途中経過である可能性が高く、畑の作物の株元・地際部で発生しているなら病害を疑う
株の様子:周辺の株が萎れていたり、生育不良を起こしていたりする場合は病害のサインと考える
広がり方:コンポスト内の白カビは全体にムラなく広がるのに対し、白絹病の菌糸は特定の株の根元に集中して現れる傾向がある
判別に自信が持てない場合は、無理に自己判断で土に埋め戻さず、疑わしい株はいったん取り除いて経過を観察するのが安全です。
白絹病症

病害株は畑にすきこんでいい? 判断基準は病気の種類
家庭菜園でよく議論になるのが、「病気になった株や残渣を、そのまま畑にすきこんで(土に混ぜ込んで)よいのか」という問題です。実はこの答えは、病気の種類によって大きく変わります。
コンパニオンプランツ研究で知られる木嶋利男先生の研究・教えでは、病害株の処理は次の2パターンに分かれるとされています。
生のまますきこむとよい病害(拮抗菌が働くタイプ)
病気の種類によっては、罹病株を生のまま土にすきこむことで、土壌中の「拮抗菌」の働きが活性化し、次第に病原菌が暴れにくくなるケースがあります。
拮抗菌とは、他の微生物の増殖を抑制する働きを持つ微生物のことです。土壌中の善玉菌の代表格である放線菌の中には、フザリウムなど病原性の糸状菌の細胞壁(キチン質)を分解する酵素を出すものがあり、病原菌の増殖を抑える「拮抗作用」を発揮します。土壌消毒などで微生物数が激減すると、この拮抗関係に空白ができ、かえって病原菌が繁殖しやすくなるとも指摘されています(豊農・微生物の拮抗作用編)。
乾燥させてからすきこむとよい病害
一方で、いったん乾燥させて水分を抜いてからすきこむ方が適切な病害もあります。生のまますきこむ方法がまったく無意味な種類の病気もあるため、「とりあえず生のまま埋めればよい」という一律の対応は危険です。
白絹病などは、すきこまない
そして、白絹病、アブラナ科の根こぶ病、軟腐病、青枯病、菌核系の病害については、土壌にすきこまずに処分するのが基本方針です。これらは土壌中で菌核や病原体として長く生き残り、再発の原因になりやすいためです。実務的には、罹病株を抜き取って畑の外の残渣置き場で管理し、焼却するなどして土壌に戻さないようにします(対策の基本はJA木曽の解説にある「一度発生した株は抜いて処分する」という考え方と共通しています)。
なぜ白絹病にはバイオフューミゲーションが有効なのか
白絹病などのすきこめない病害に対しては、「バイオフューミゲーション(生物的くん蒸)」という土づくりを兼ねた処理方法があります。
これは、カラシナのような辛味成分(グルコシノレート)を持つアブラナ科の作物を畑にすきこむことで土壌病害を抑制する方法です。グルコシノレートが土の中で加水分解されるとイソチオシアネートというガスが発生し、これが土壌病害の抑制に働きます(ルーラル電子図書館「カラシナすき込み」)。
薬剤による土壌消毒とは異なり、アブラナ科の作物をすきこむこと自体が土づくり(有機物補給)を兼ねられる点が、家庭菜園では扱いやすいポイントです。ただし、土の有機物・腐植がすでに十分に豊かな場合は、太陽熱消毒など別の方法を選ぶという判断もあり得ます。畑の状態に応じて処理方法を使い分ける視点が重要です。
【観察コラム】畑の雑草も、土壌環境のヒントになる(ここからはやや決めつけています。)
病害の観察を続けていると、同じ視点は雑草にも応用できるのではないかと感じることがあります。
たとえば、スベリヒユやシロザのような「肥沃な土壌に出る」とされる雑草は、必ずしも有機物が豊富な畑だけに現れるわけではありません。
土がかき混ぜられて酸素に触れる機会があった場所に、突然出現することがあります。逆に、耕作放棄地を再生し始めたばかりの、まだ土が十分にこなれていない畑では、酸素に触れる機会があっても現れないことがあります。
これは、有機物や腐植そのものというより、土壌が攪拌されることで生まれる「酸素」という条件が、雑草の発芽・発生に関わっている可能性を示唆しています。まだ科学的に検証された仮説ではありませんが、病害と同じように「見た目だけで判断せず、条件を観察して仮説を立てる」という姿勢は、土づくり全般に共通する考え方です。
よくある質問
Q. コンポストの白カビは、すべて安全と考えてよいですか?
A. コンポスト容器の中で、発酵・分解の過程として発生する白カビは基本的に問題ありません。ただし、同じ白いカビ状のものでも畑の作物の株元に発生している場合は、白絹病など土壌病害の可能性があるため、発生場所と株の様子を必ず確認してください。
Q. 白絹病になった株はどう処分すればよいですか?
A. 土壌にすきこまず、抜き取って残渣置き場などで管理し、焼却処分するのが基本です。菌核が土壌中に残ると翌年以降も再発するため、土に戻さないことが重要です。
Q. 拮抗菌を増やすにはどうすればよいですか?
A. 良質な堆肥を定期的に施用し、土壌消毒などで微生物相を大きく減らさないようにすることが基本になります。放線菌やトリコデルマ菌のように他の病原菌を抑える微生物を含む堆肥・土壌改良材の活用も選択肢です。
Q. すべての病害株を、乾燥させてからすきこめば安全ですか?
A. いいえ。病気の種類によっては、生のまますきこむことで拮抗菌の働きが活性化するケースと、乾燥させても意味がないケースがあります。判断に迷う場合は、白絹病など再発性の高い病害と同様に、すきこまずに処分する方が安全です。
まとめ
コンポストの白カビと畑の白絹病は、見た目こそ似ていても、発生する場所や株の状態を見れば区別の手がかりが見えてきます。病害株の処理も「とりあえず土に埋める」のではなく、拮抗菌が働くタイプか、乾燥が必要なタイプか、そもそもすきこんではいけないタイプかを見極めることが、家庭菜園での土づくりを一歩進める鍵になります。白絹病のように再発しやすい病害には、アブラナ科をすきこむバイオフューミゲーションのような、土づくりと病害対策を両立できる方法も選択肢に入れてみてください。
参考文献・出典
家庭菜園士 七尾有美(七尾びび)note「善玉の菌ちゃん?病原”菌”ちゃん?」(2024年8月18日)
JA木曽「【家庭菜園アドバイス】白絹病の紹介と対策について」
ルーラル電子図書館「カラシナすき込み」用語解説
豊農・アグリ「土壌改良材のススメ③微生物の拮抗作用編」