七尾有美(七尾びび)の終身雑草🌿

私生活の趣味 unreliable narrator🌿放蕩雑草愛好家として、仕事では家庭菜園士として。

スギナのそばで、ホウレンソウが濃く色づいたこと ──観察とへっぴり腰でおっかなびっくりの仮説添え🌿

七尾有美(七尾びび)



(防草シートの下でやや軟白していたホウレンソウとスギナに色がついた様子。なぜそこにホウレンソウの種子があったのかは謎。)



観察したこと(事実として書けること)

施肥は生ごみコンポストのみで、化成肥料や液肥は使っていないこと

濃く着色したのは、スギナと同じ区画で育ったホウレンソウだけだったこと

ここから先は、あくまで仮説である。原因を一つに絞れる観察ではないし、区画数も反復もなく、統計的な意味での比較試験ではない。



既往研究・慣行知との突き合わせ

従来の定説:スギナが生える畑はホウレンソウに向かない


ホウレンソウは野菜のなかでも特に酸性土壌に弱く、pH6.2〜7.0程度の微酸性から中性を好むとされる。栽培指針類でも「スギナがたくさん生える畑は土壌が酸性化しているため、ホウレンソウ栽培には向かない」と明記されており、これは長く共有されてきた実務知だよね。よく見かけてよく読んだ。


(🦊経験則:スギナだけが出ている場合と、スギナもあるし、ほかの諸君も出ている場合もあるし、スギナもたくさんあるが、ほかの草諸君もたくさんという言葉の相打ちもあるし、スギナの立ち位置もいろいろなんで、一律じゃないでしょうね。一種類の雑草縄張りってこわいょぅ。)



ただし、雑草学の側からスギナの発芽・生育条件を調べた研究では、スギナはpH4.5〜7.8という広い範囲で発芽が可能であり、「強酸性でしか生きられない植物」ではないことが示されている模様。「スギナ=酸性指標」はある人々の経験則としては強力だが、生理的な必然ではない、という留保はしておく余地がある。(🦊わたしはちなみに「スギナ=酸性指標」とは思えない派閥。先述の通り出方もいろいろ。)



スギナのミネラル論:自然栽培・家庭菜園系の言説

一方、自然栽培や家庭菜園の界隈では、少し異なる語り口が広く共有されている。


スギナは地上部に、ホウレンソウを基準にするとカルシウムで155倍、リンで5倍、カリウムで5倍、マグネシウムで3倍といった水準のミネラルを蓄えているとされ、深く伸びる根で土中の少ないミネラルを集めて地上部に上げ、枯れて土に還ることで、その場のカルシウム・ミネラル状態と酸度バランスを緩やかに整えているのではないか、という見立てである。

この言説は学術的に確立された土壌診断法ではなく、「あくまで目安」という留保つきで語られていることが多い。

近年のケイ素研究と重ねると、まったくの民間伝承として片づけられない部分がある。


わたしはこの件は保留。

なぜなら、スギナであんがいいい思いもしたけど、スギナゾーンで野菜が不毛、おっかなくて逃げたくなった思いもしたから。


ケイ素(Si)とホウレンソウをつなぐ研究

近年、スギナと葉物野菜の関係を、ミネラル一般ではなく「ケイ素」に絞って再評価する研究が出てきている。

(🦊さっき書いた「スギナであんがいいい思いもした」由来がこの可能性がある。)


スギナは乾物の22〜25%以上がシリカ(ケイ素)で、ケイ素の超蓄積植物として知られる。

乾燥・粉砕したスギナを土壌に混ぜると、周囲の作物(実験ではコムギ)のケイ素吸収量が対照区の5倍に増え、煮沸や炭酸水素ナトリウム併用ではさらに大きく伸びることが示されている。


スギナ抽出液を葉面散布した別の実験(対象はスイートバジル)では、生体重、乾物重、葉数、葉面積指数、フェノール類、フラボノイド、アントシアニン、抗酸化活性が濃度依存的に大きく増加したと報告されている。(🦊うぉー。やりたい。)


ホウレンソウ自体を対象にしたケイ素研究も蓄積があり、高温・塩・ホウ素・過剰硝酸などのストレス下で、ケイ素施用がクロロフィル・カロテノイドの維持、細胞膜の健全性、水分状態を改善する方向で一貫した結果が出ている。現場の栽培試験レベルでは、Si添加区で葉柄の硝酸イオンが下がり、生育・品質面でもわずかに優れる傾向が観察されている例もある。

(🦊断言風で偉そうな文章ですが、あくまでも「伝言ゲーム」的。わたし自身は経験則界の確実と言える一次情報を持ちません。)



仮説:畑で起きていたかもしれないこと(ただし、ただの数度程度なので経験則として胸を張るにもおぼつかないこと。)


以上を踏まえると、今回の観察は次のような二段構えの機序で読み直せる可能性もある。あくまで可能性の話として書くし、可能性の話として読んでほしいなぁと。


仮説A:スギナ由来のケイ素・ミネラルが局所的に効いた

スギナが同居していた区画では、根や地上部の枯死・分解を通じて、可給態のケイ素や一部のミネラルが局所的にわずかに高まっていた可能性がある。生ごみコンポスト由来の有機物と組み合わさることで、微量要素と有機酸のバランスが、そこだけ他より整っていたかもしれない。



仮説B:ケイ素を得たホウレンソウが着色を維持しやすかった

ケイ素をより多く取り込んだホウレンソウは、光条件や温度の変動、あるいは軟白から露光へ切り替わる過程のストレスに対して、葉緑素・カロテノイド・アントシアニンをより保ちやすい状態にあった可能性がある。ここは既往のホウレンソウ×Si研究と方向が一致する。



仮説C:軟白→露光の光応答が、着色として現れやすい条件が揃っていた。

一時的な軟白状態からの露光復帰は、それ自体がアントシアニン誘導の引き金になりうる。


生ごみコンポストによる窒素・硫黄・微量要素の供給と、スギナ由来のケイ素供給仮説が重なることで、この応答が視認できるレベルで表面化した可能性もある。



慎重に留保しておきたいこと

同時に、次のような弱点も併記しておきたい。

区画は一つで、反復もなく、対照区もない。「スギナがある区画だけ濃色化した」という主観的な観察であり、光条件・水分・地温の局所差、種子ロットや個体差では説明できないと言い切れる根拠はない。

スギナと葉物野菜の相性を、圃場条件下で長期に検証した学術研究は、私が調べた範囲では見つからない。ケイ素の効果は水耕・鉢試験、あるいは他の作物での結果からの類推である。

スギナには、周囲植生に対するアレロパシー(アルカロイド由来の他感作用)を示唆する古い報告もあり、条件によっては相性が悪い方向にも触れうる。「スギナは葉物と相性がよい」と一般化するには、まだ材料が足りない。


「スギナが多い畑=酸性でホウレンソウ不向き」という従来の実務知は、多くの畑で経験的に確かなものであることも忘れずに置いておきたい。


今回の観察は、その実務知を否定するものではなく、その裏側にある機序を少し細かく見直したい、という程度のものである。だってわたしはスギナ陣取り畑を最低数100だって見たわけでもないんだしね。言う口は持っていないんである。でも自分のブログなんで言っちゃったんである🦊✌


家庭菜園の一区画からできる範囲は限られているが、「スギナ=敵」でも「スギナ=万能のミネラル供給源」でもない、もう少し細かい像を描いていければと思う。



スギナの隣で、ホウレンソウが濃く色づいた。それだけの話ではある。

でもなんか好きだったんだ。


ホウレンソウ側のストレス応答という物語性を重ねてみたかったし、重ねる最低条件だけ、ギリギリギリあったのでやってしまった。🦊


書いちゃったもんね🦊✌




参照した主な資料

スギナの発芽・生育とpHの関係:雑草研究 60(4), 2015 https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed/60/4/60_158/_pdf

スギナがホウレンソウ栽培に向かないとする栽培指針:滋賀県「葉茎菜類 ホウレンソウ」 https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1049337.pdf

ホウレンソウの適正pHと酸性土壌での注意点:note「酸性土壌でホウレンソウを育てる際の注意点」 https://note.com/gijutsu_plant/n/n62b7161a38d4

雑草による土壌酸度の推測:趣味の園芸「生えている雑草でわかる!?あなたの畑の土壌酸度は?」 https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_tn_detail&target_xml_topic_id=engei_003660

スギナのミネラル論と地力レベル:マイナビ農業「畑の雑草図鑑〜スギナ編〜」 https://agri.mynavi.jp/2019_02_21_61098/

スギナのカルシウム・ミネラル比較と自然栽培での位置づけ:飛騨高山よしま農園「無肥料自然栽培〜戦わない農業〜」 https://www.yoshima.net/mu/tatakawanai.html

菌ちゃん農法におけるスギナと菌の関係:食材ぴかぴか家族「菌ちゃん農法の大事な畝作りと土作り②」 https://pure-life0181.com/furrow-making2/

菌ちゃん農法の単純化への注意:note「つながっている。菌ちゃん野菜から始める『お腹と土』を育てる」 https://note.com/samurai_teacher/n/nf17f036e3de1

スギナのケイ素蓄積とSi肥料としての利用:Greger & Landberg (2024) "Equisetum arvense as a silica fertilizer" https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38615440/

スギナ抽出液の葉面散布による作物への効果:Eghlima et al. (2024) Scientific Reports https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11094123/

高温ストレス下のホウレンソウにおけるケイ素施用の効果:Khosa et al. (2023) Crop & Pasture Science https://www.publish.csiro.au/CP/fulltext/CP22192

塩ストレス下のホウレンソウにおけるケイ素施用:PMC9182609 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9182609/

硝酸ストレスがホウレンソウの生育・光合成・抗酸化系に与える影響:Han et al. (2023) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10065267/

Si施用によるホウレンソウの硝酸低減・品質向上の現場報告:九電レポート「Si22ファン」 https://www.palup-agri.com/repo-kiji/

スギナのアレロパシー(アルカロイド由来の可能性):Victoria州土壌健康ナレッジベース https://soilhealth.ccmaknowledgebase.vic.gov.au/vro_archive/statewide/pages/invasive_common_horsetail.html




発芽保証期限が7年過ぎたホウレンソウの種子をぶん投げておいて勝手に出てきた図

スギナのない場所の色づき。

品種も別なので、比べようもありませんが。